第123章 彼女は去るつもりだ

小寺蘭が記憶を失った――その報せが届いたとき、喜ぶ者もいれば、嘆く者もいた。

そして、暗がりに身を潜めている連中にとっては――まさに天から降ってきた好機だった。

蘭が目を覚まして三日目。深夜の拘置施設で、トラが急性心筋梗塞を起こし、蘇生は叶わず「事故死」した。

人が死ねば、糸も切れる。

西川星奈へ繋がっていた証拠の鎖は、最も肝心な一環で、ぷつりと途絶えた。

世論は騒然。

誰もが「おかしい」と嗅ぎ取った。だが決定的な証拠がない以上、口にできるのは憶測だけだ。西川星奈は再び、公の場で「潔白で無垢な顔」を取り戻す。

けれど――その喧噪も、須藤寧音にとっては、もうどうでもよかった。

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