第128章 三つ子の魂百まで

西川星奈はシルクのガウンをまとい、赤ワインのグラスを手にしたまま、二階の影の中に静かに立っていた。

目に映ったのは、母の顔に走る一瞬の切り替え――媚びた笑みと、剥き出しの殺意。

「三つ子の魂百まで、ね」

星奈はグラスの赤をゆらりと揺らし、口元に嘲りの弧を刻む。

母の奔放な私生活も、表に出せない手口も、いまさら驚くようなものじゃない。坂東彩は自分を切れ者だと思い込み、男を手のひらで転がしているつもりなのだろう。だが実際は、ちょっとした小賢しさの一つ一つが、刃の上で踊っているのと同じだ。愚かで、危うい。

ことに、古川家という巨大な存在を相手にするなら――なおさら。

以前の星奈なら、冷...

ログインして続きを読む