第132章 同じ病院

夜は墨を流したように濃く、北区一帯を深い闇で覆い尽くしていた。万家の灯りが瞬いても、人の胸の底に巣食う陰まで照らすことはできない。

島田章人は車内で息を潜め、少し先のアパートを睨みつけていた。須藤寧音の住まい。彼は丸二日ここに張りつき、彼女の生活リズムをすっかり把握している。

坂東彩が出した筋書きは、事故に見せかけたガス漏れだった。

手順さえ誤らなければ、誰もが「須藤寧音の不注意」で片づける。悲劇の責任は彼女自身にある――そう思い込ませられる。島田がやることは、彼女が眠りに落ちた隙に、音もなく侵入して……。

月明かりを受け、冷たい刃がひたりと光った。

ガス漏れだけでは足りない。万が...

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