第147章 ママ、抱っこしてあげて

黒塗りのベントレーが、南市の古鎮にある人目につかない小さな院へ、するりと滑り込んだ。

須藤寧音もちょうど帰宅したところで、疲れたようにこめかみを指で押さえていた。

門の外からエンジン音が聞こえた瞬間、寧音の口元がふっと緩む。

――甘乃と立花徹が戻ってきた。

寧音は服の乱れを整え、足早に玄関へ向かって扉を開けた。

「甘乃、今日は遊園地、楽しかっ――」

声が、喉で凍りつく。

寧音の笑みは一瞬で固まり、その視線は甘乃に手を引かれている小さな男の子へ、釘付けになった。

その子――。

眉、目元、輪郭。まるで同じ型で抜いたみたいな造り。

……そんな、ありえない。

「ママ!」

甘乃...

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