第150章 江口おじさん

四輪駆動車は、でこぼこの山道を四時間以上も跳ね回った。窓の外は走るほどに荒れ、携帯の電波もいつの間にか完全に途切れている。

須藤寧音は窓枠の上にあるグリップを白くなるほど握り締めた。顔色は紙みたいに青い。胃の奥がぐらりとひっくり返りそうなのに、歯を食いしばって、痛みの声ひとつ漏らさない。

古川寒弥は、揺れに煽られてさらに薄く見える彼女の身体を横目に、何度も手を伸ばしかけた。けれど、そのたびに寧音は蛇でも避けるみたいに身を引く。

「……あとどれくらい?」

冷えた声。視線はずっと車窓の外に貼りついたままだ。

「もうすぐだ。前の山を越えれば着く」

古川寒弥は伸ばしかけた手を引っ込め、低...

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