第30章「幸せな家庭」

 

車は、結局――古川本家で停まった。

須藤寧音が玄関に足を踏み入れた瞬間、小さな影が二階の踊り場から砲弾みたいに駆け下りてくる。

一直線に突っ込んだ先は、彼女の背後にいた古川寒弥だった。

「パパ!」

古川辰は古川寒弥の脚にしがみつき、華奢な身体を小刻みに震わせながら、泣き腫らして赤くなった大きな目で、須藤寧音を敵意と警戒心むき出しに睨みつけた。

「なんでこいつ連れてきたの?!」

声が甲高い。

「いらない! もう二度といらないって言ったのに!」

その視線を受け止めた瞬間、須藤寧音は胸の奥が抉られるみたいに痛み、息が詰まった。

たった数日。

後ろにくっついて、甘い声で「ママ...

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