第31章 君が嫌いだ

 

スーパーから戻ると、古川邸の――モデルルームみたいに冷え切ったキッチンに、久しぶりに生活の匂いが立ちのぼった。

須藤寧音はピンクのエプロンを結び、買ってきたばかりの食材を手際よく捌いていく。

野菜を洗い、切り、火にかける……。

動きは淀みなく、余計な間が一切ない。まるで何百回、何千回と繰り返してきたかのように。

事実、そうだった。

この三年間、彼女はこの狭い場所で、来る日も来る日も、感謝ひとつ知らない父子のために身を粉にしてきた。

ここが自分の帰る場所なのだと、信じていた。

いま思えば――なんて滑稽なのだろう。

古川寒弥はキッチンのドア枠にもたれ、黙ったまま、忙しく動く須...

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