第36章 坊や、一人?

 

夕暮れの茜が空を、息をのむほど鮮やかな橙に染め上げていく。

けれどそのやわらかな光は、須藤寧音の瞳に落ちた瞬間、ただ刺さるような寒々しさへと変わった。

古川辰。

どうして、ここにいるの……?

誰が連れてきた?

疑問が、次々と頭の中で破裂する。

――なのに、次の瞬間にはもっと強い感情がそれらを塗り潰した。

会いたくない。

反射的に背を向けて逃げようとした、そのとき。

背後の立花徹も、同じものを見つけていた。

「須藤さん?」

彼は彼女の異変を察し、隣へ進み出て視線の先を追う。端正な眉がわずかに寄った。

「……あれは」

「わたし……会いたくない」

須藤寧音の声は、隠...

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