第50章 ママと呼ばないで

 

須藤寧音は、とても長い、長い夢を見ていた。

夢の中の彼女は、まだ「古川奥さん」という重い枷を被せられる前の自分だった。

意気揚々と、全国大学生声優コンテストの決勝ステージに立つ。スポットライトが肩に降り注ぎ、世界中が彼女の声に喝采しているようだった。

祖父も出てきた。庭の大きな梔子の木の下に座り、にこにこと笑って言う。

「うちのねねはな、じいちゃんが見てきた中でいちばん立派な子や」

それから、白いシャツを着た、眉目の涼しい少年――。

少年はバスケットコートの真ん中に立っていた。陽射しが影を長く引き伸ばし、彼はただ静かに彼女を見ている。瞳の奥に、星が瞬いているみたいに。

それ...

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