第61章 古川寒弥は彼女のことをけっこう気にかけている?

消毒薬の濃い匂いに、かすかな血の生臭さが混じる。古川寒弥の鼻腔を、乱暴に侵した。

まぶたは鉛を流し込まれたみたいに重い。彼は息を整えるだけでも苦労しながら、ようやく薄く目を開けた。

飛び込んできたのは、白すぎて不安になる天井。

宙に吊られた点滴バッグから、冷たい液がぽたり、ぽたり、と落ちている。

「古川社長! お気づきですか!」

傍らに控えていた周防一洋が、ぱっと顔を輝かせて身を乗り出した。生きて戻れたことへの安堵が、声の端から溢れている。

「先生の話では大事には至らず、あとは――」

だが古川寒弥は、まるで聞こえていないかのようだった。

意識を失う直前。

須藤寧音が向けてき...

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