第63章 パパはまだママと離婚してないんだ!

美術館の高いドーム天井の下、クリスタルのシャンデリアが柔らかくきらめき、壁に掛けられた高額な絵画の一枚一枚を、まるで宝石のように照らし出していた。

けれど今、展示室にいる誰もが、示し合わせたように同じ一点を見つめている。

黒いロングドレスをまとった、華奢な女。

その手を、小さな影が必死に掴んで離さない。

古川辰は泣き叫び続けていた。

「お爺さんに約束したでしょ! ずっとぼくと一緒にいてくれるって!」

「……あれ、忘れちゃったの?!」

幼い声は興奮で掠れ、ひとつひとつの言葉が血と涙を含んだ糾弾みたいに、須藤寧音の胸を叩く。

もともと崩れかけていた心の防壁が、音を立てて瓦解してい...

ログインして続きを読む