第65章 彼女は星市を離れるつもりだ

美術館での後味の悪いレセプションから戻って以来、須藤寧音はひどく体調を崩した。

小寺蘭のマンションで二日間、彼女はほとんど意識の浮き沈みに身を任せるように寝込んでいた。つわりと微熱が入れ替わり立ち替わり襲いかかり、見る影もないほど消耗させられた。

けれど今回は、悲しみと絶望の底へ、自分を沈めたままにはしなかった。

肉体の苦痛はむしろ、感情に何度も切り刻まれてきた心を、いっそう冴えさせ、硬くした。

行かなければならない。

お腹の子を連れて、この息苦しい街から。耐えがたい過去のすべてから。

熱が下がった最初の日、須藤寧音は無理やり身体を起こし、これから先の段取りをひとつずつ書き出し始...

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