第68章 裏切りの苦しみ

アパートの中。暖かな琥珀色の灯りがリビングをやわらかく包み込み、穏やかで静かな空気を作っていた。

ほのかな料理の香りが、部屋にふわりと漂う。

須藤寧音は――結局、突き放しきれなかった。

自分の手で台所に立ち、古川辰の大好物を用意する。トマトソースのタラ、そしてコーラチキンウィング。

玄関を入ったときから、いっちょ前の顔をしていた子どもは、懐かしい匂いを嗅いだ瞬間、こらえきれず目の縁が赤くなった。

夕食は、異様なほど無言だった。

大人と子ども。ふたりとも何も言わない。まるで、ただの食事ではなく――言葉にしない別れの儀式みたいに。

食後、須藤寧音は物置を探って、小さな箱を持ってきた...

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