第71章 彼はどうして来たのか?

スイス、レマン湖のほとり。

ルツェルンの本社は、静まり返った山麓に鎮座していた。ガラスと寒色の鋼材で組まれた建物は、まるで研ぎ澄まされた氷刃。アルプスの濃い緑へ、正確に突き立てられているかのようだ。

会議室の空気は、厳格で、粛然としていた。

立花徹は須藤寧音の隣に腰を下ろし、声を落として説明を添える。

須藤寧音は、きりりとしたアイボリーのパンツスーツ。長い髪を清潔なシニヨンにまとめ、白く細い首筋がすっと露わになっていた。すっぴんに近い小さな顔には、集中と冷静だけが張り付いている。

数日前の、胸を引き裂くような決裂も、その後の逃走も――まるで前世の出来事のように。

けれど自分だけは...

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