第79章 記憶喪失と悪性腫瘍

病室の扉がそっと閉まり、西川星奈の期待に満ちたまなざしは、その向こう側へ遮られた。

古川寒弥は静まり返った廊下に立ち尽くし、頭の中で何度も何度も、西川星奈の言葉を反芻していた。

すぐには答えられなかった。

医師と話がある――そんな口実をつけて、彼は息の詰まるあの病室から逃げ出したのだ。

カンファレンスルームの空気は重かった。

主治医は数枚の検査報告書を彼の前へ差し出し、厳しい表情で口を開く。

「古川さん、西川さんのご容態ですが……想定していたより、かなり複雑です」

古川寒弥の胸が、どすりと沈んだ。

「……どういうことですか」

「まず身体面ですが」

医師は一枚の画像資料を指...

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