第88章 別れの儀式

病院の特別個室。

ブラインド越しの陽光が、真っ白なシーツにまだらな影を落としていた。

西川星奈は淡いブルーの、肌触りのいい病衣を身にまとい、ベッドに半身を預けている。顔色は青白く、唇にも血の気がない。手の甲には点滴を抜いたあとのテープが貼られ、誰が見ても「守ってあげたくなる」病弱さが完成していた。

付き添いのアシスタントがスマホを構え、角度を微調整しながら撮影する。星奈はタゴールの詩集を胸に抱き、窓の外へ横顔を向けた――その一枚を。

「もう少し、光をやわらかく」

星奈はか細い声で指示する。

「表情……そう。それ。迷いがあって、でも折れない感じ」

アシスタントは何度も頷き、指を素...

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