第92章 蘭ちゃん、私は疲れた

飛行機はトリブバン国際空港に着陸した。

カトマンズの空気は湿っていて、雑多だ。香辛料の匂いに、宗教儀式で焚かれる香の煙が混じり、喉の奥にまとわりつく。

神々の都――その名は、須藤寧音の心を癒やすどころか、巨大で見えない網のように彼女を絡め取り、もともと苦しい呼吸をさらに締めつけた。

空港からホテルへ向かう車中、小寺蘭はずっと寧音の手を強く握っていた。けれど、どれだけ包んでも、その指先は温まらない。

古川寒弥が手配したのは、カトマンズでも指折りの最高級ホテルだった。赤煉瓦で組まれた宮殿のような建物。濃密な歴史と芸術の匂いが、廊下の隅々まで染み込んでいる。

――だが、どれほど美しい景色...

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