第99章 私から遠ざかってください

フェワ湖畔での別れは、須藤寧音の胸に長年澱のように溜まっていた鬱屈を、きれいさっぱり洗い流してくれた。

北城の中心部――自分の小さなマンションへ戻ると、寧音は三日ほど静養に充てた。

昼はバルコニーの籐椅子に腰を下ろして本を読む。ガラス越しの陽射しが肩に落ち、じんわりと体の芯まで温めてくる。夜は簡単な夕食を作って、古い映画を一本。あるいは雑味のないクラシックを流し、音だけに身を委ねた。

小寺蘭は落ち着かなかった。毎日顔を出しては、寧音が平気なふりをしているだけで、内側はもう崩れているんじゃないかと疑っていたのだ。

けれど数日見ているうちに、蘭は気づく。

寧音は、本当に回復していた。

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