第109章

拓真は黙り込んだ。

――そりゃそうだ。

今の自分は何も持っていない。美月がわざわざ、こんなところまで来て暇つぶしに騙す理由なんてない。

受話器を握る手に力が入る。喉仏がごくりと上下し、声は自然と低く沈んだ。

「……何が目的だ」

美月が、見返りもなく助けるはずがない。

「何が欲しいかなんて、あんたが外に出たら分かるわよ」

美月はわずかに身を乗り出し、目を細める。

「拓真。あんた、本気でそれでいいの? 一生、美咲の身代わりで終わって」

拓真の身体が、びくりと硬直した。

身代わり。

その言葉は針のように、心臓のど真ん中へ突き刺さる。

――納得できるわけがない。

――どうし...

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