第112章

美月は訝しげに彼を一瞥したものの、深く考えずに視線を落として食事を続けた。

彼女は気づかなかった。ファングの瞳に、得意げな光が一瞬だけ走ったことを。

――待ってろ。

湊、だったよな。

人を取り合うってんなら、こっちは手はいくらでもある。

食事を終えるころには、もう夜9時を回っていた。

ファングは妙に手際よく会計を済ませ、さらに紳士ぶって彩を家まで送ると言い出したところで、美月に後ろ襟をがしっと掴まれる。

「おまえ、いい加減おとなしくしとけ。自分でタクシー乗って私のとこ戻れ。そこらへんフラフラすんな、いいな?」

「はいはい、分かったよ」ファングは口を尖らせつつも素直に頷く。「俺...

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