第50章

湊は一瞬きょとんとしたが、すぐに状況を飲み込んだ。

顔つきがわずかに険しくなる。足音を殺し、そのまま階段口の死角へと身を引いた。

美月はひとつ深呼吸し、そっと鍵を捻る。

扉は押さない。身体を壁に沿わせたまま、耳を澄ませ――。

次の瞬間、影がふっと揺れた。

彼女はするりと中へ滑り込み、音もなく玄関へ潜り込む。

――やはり、いた。

玄関の陰に潜んでいた男は、美月がここまで素早く入ってくるとは思っていなかったのだろう。振り向こうとした、その刹那。

ドンッ。

後頸部に、重い衝撃。

美月の手刀が、躊躇なく頸動脈の位置へ叩き込まれていた。速い。鋭い。外さない。

男が「ぐっ」と喉の奥...

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