第61章

隼人はびくりと全身を強張らせ、その場から一歩も動けなくなった。

美月の氷みたいな視線を受けて、頭の中に浮かんだのはただひとつ。

――こいつ、イカれてる。

――しかも、本当にやる。

隼人が大人しくなったのを見て、美月は満足げに小さく頷いた。

そしてブラシを手に、隼人の口元へと寄せる。

隼人は恐怖で唇をぎゅっと結び、ぶんぶんと首を振った。涙までこぼれてくる。

「口、開けて」

隼人は歯を食いしばり、意地でも開けない。

美月は眉を上げただけで、言い争う気配すら見せなかった。

片手を空けると、隼人の顎を掴む。ぐい、と軽く力を入れた。

次の瞬間。

ごきり、と嫌な感触が走り、顎が外...

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