第85章

電話の向こうの千鶴は黙り込んだ。しばらくしてから、ようやく小さく息を吐く。

「あなたを疑ってるわけじゃないの、橘さん」

「ただ……こっちの回線、監視されてる気がして」

「メールなんて送ったら、途中で誰かに見られるかもしれないでしょ」

「これは大事な話。絶対に、ミスはできないの」

美月は短く考え込む。

回線が監視――。

源一という老獪な男、千鶴への警戒は相当らしい。

「電話でやり取りは?」と美月が言うと、

千鶴は一瞬、言葉に詰まった。

「……電話?」

「そう。Tに暗号回線でかけさせる。盗聴は無理。番号も仮想だから、出どころは追えない」

数秒の逡巡ののち、千鶴は小さく頷い...

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