第87章

書斎の空気が、凍りついたみたいに重かった。

モニターから流れるのは、子どもの引き裂かれるような泣き声。鼓膜を針で刺されるみたいに痛い。

美月は無表情のまま、動画のページを閉じた。

彩はまだ洗面所でえずいている。しばらくは戻ってこれそうにない。

美月は深く息を吸い込み、胸の奥で渦巻く殺意を押し殺した。

指先がキーボードを走る。数回の操作で、暗号化されたチャット画面を開いた。

アイコンは牙をむいた灰色の狼。登録名は二文字だけ――ファング。

美月は短く打つ。

「“夢魘”を2本、用意して」

送信した瞬間、相手は秒で返してきた。画面いっぱいに疑問符が流れる。

ファング:?????

...

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