第91章

千鶴の胸がどくんと跳ね、不吉な予感が背筋を走った。

「……誰なの?」

声が、わずかに強張る。

「市立病院の向田院長」

美月が淡々と、それだけを告げる。

電話の向こうが、すっと無音になった。

千鶴はスマホを握りしめたまま、顔色がみるみる白くなっていく。

向田院長――それで「一番下」?

じゃあ、その上には、いったい何人いる。

その瞬間、千鶴は理解した。美月が「自分たちで暴露するな」と止めた理由を。

関わっている人間が多すぎる。官と商が手を組み、逃げ道のない網の目みたいに絡み合っている。

自分たち母娘が、いくら金と立場を持っていようと、そんな連中の反撃を受け止められるはずがな...

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