第93章

精神科病棟のVIP個室で、源一は苛立ちを抑えきれずにいた。

昨夜、あの黒ずくめの男が去った直後から、頭の中が嘘みたいに冴え渡った。何日もまとわりついていた幻覚は、跡形もなく消え失せたのだ。

――やっと正気に戻れた。

そう喜ぶ間もなく、次に気づいたのは自分がこの薄気味悪い場所に閉じ込められているという現実だった。

ドアは施錠。窓には格子。喉が潰れるほど叫んでも、来るのは看護助手だけ。入ってくるなり無言で鎮静剤を打っていく。

黒崎ホールディングスの会長であるこの俺が、精神病院に監禁だと?

源一は病室の中で壊せるものを片っ端から叩き壊した。だが返ってきたのは、追加の一発だけ。何ひとつ状...

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