第72章

 乾いた音が響き渡り、その場の全員が虚を突かれた。

 千凪は反射的に飛び出し、光弘を庇うように立ち塞がった。

「何するの!?」

 光弘は驚いたように目を見開いた。自分の前に立ちはだかる千凪の華奢な背中を見つめ、胸の奥が熱くなるのを感じた。

「どこの馬の骨とも知れない小娘が。光弘に股を開いて玉の輿に乗ったつもり?」

 真理子は顔を歪め、罵声を浴びせた。

「いいこと、今日は光弘だけじゃない、あんたも一緒に躾(しつ)け直してやるわ!」

 そう言い放つと、真理子は千凪に向かって手を振り上げた。

 だが、その手首は空中で止まった。光弘が万力のような力で掴み上げたのだ。

 光弘の表情は...

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