第73章

千凪は小さな悲鳴を上げ、腹いせとばかりに光弘の肩に噛みついた。

 光弘は眉一つ動かさず、愛おしげに彼女の頭を撫でる。肩に残る歯型さえ、甘んじて受け入れているようだ。

 光弘が何の反応も示さないため、千凪もつまらなくなり、彼の肩にもたれかかって息を整えた。

 ふと、千凪の指先が光弘の背中にある違和感を捉えた。

 訝しんで光弘の背中へ回り込み、目を凝らす。そこには、蛇のようにうねる傷跡が走っていた。丁寧に治療されたのだろう、痕はそれほど目立たなくなっているが、確かにそこに刻まれている。

「背中、どうしたの? その傷」千凪は尋ねた。

 光弘はすぐには答えなかった。傍らのバスタオルを取っ...

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