第75章

 千凪(ちなぎ)は彩葉(いろは)を抱きかかえ、急いで保健室へと駆け込んだ。

 彩葉の手のひらの傷には砂が入ってしまっており、生理食塩水で洗浄する必要があったからだ。

 処置の間、彩葉は千凪の腕の中で小さく体を丸めていた。見ている千凪の胸が痛むほどだったが、彩葉はもう一声も泣かなかった。

 医師の処置が終わると、千凪は言った。

「ごめんね、彩葉ちゃん。悠真(ゆうま)は私の息子なの。あの子があなたを傷つけるなんて思いもしなかった……。あの子に代わって謝らせて」

「えっ? 本当に悠真くんのお母さんだったの? 私、てっきり彼への当てつけで言ってるだけだと思ってた。でも……千凪さんみたいに優...

ログインして続きを読む