第79章

熱いコーヒーを浴びせられ、聡一郎は悲鳴を上げた。

 激昂して怒鳴りつけようとしたが、顔を上げると、すでに千凪の姿はどこにもなかった。

「くそっ!」

 ドン、と聡一郎は拳をテーブルに叩きつけた。

 その大きな音に我に返ると、周囲の客や店員が白い目を向けていることに気づく。

 顔も髪もコーヒーまみれで、見るも無惨な姿だ。聡一郎は屈辱と気恥ずかしさに歯噛みした。

 ひそひそと交わされる嘲笑が、彼の怒りに油を注ぐ。心の中で、千凪への罵詈雑言を繰り返した。

「千凪、覚えてろよ!」

 ……

 今回、聡一郎は離婚届にサインしなかったが、千凪にこれ以上引き延ばすつもりはない。

 一日も早...

ログインして続きを読む