第82章

その光景を目の当たりにして、千凪は呆然と立ち尽くした。胸が締め付けられるように苦しい。

 光弘がダンスフロアに姿を現したことで、周囲はどよめきに包まれていた。

「信じられない、あれ本当に光弘か? 彼は決して踊らないはずだぞ。誰に誘われても断っていたのに、今日はどういう風の吹き回しだ?!」

「誘えば受けてくれるなんて知っていれば、私が誘ったのに! あの冷たさは怖いけれど、やっぱり素敵だわ!」

「夢を見るのはおよしなさい。お相手は白石家の令嬢よ。光弘のご両親が縁談を進めていて、どうやら彼女で決まりらしいわ。この曲が終われば、婚約発表があるんじゃないかしら」

 背後から聞こえる噂話に、千...

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