第10章

「帰るって……紬、行っちゃうの?」

少し離れた場所から、悲鳴に近い声が飛んできた。清宮紬は反射的に顔を上げる。

美坂莉央がこちらへ駆けてくる。ハイヒールが石畳を打つ音が、カツカツと途切れなく響いた。

その背後で、清宮誠太郎が彼女に押されてよろける。転びかけたまま立ち上がる余裕もなく、ただ不安げな目で二人を見つめていた。

――やっと会えた、両親。

その顔を前にすると、清宮紬の胸はどうしても柔らかくなる。正直、夫婦と目が合った瞬間から、今まで味わったことのない「帰ってきた」という感覚が体の奥に広がっていた。

けれど、戻らないわけにはいかない。

数か月も追い続けた“あれ”を、ここで手...

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