第117章

「清宮社長、こちらが風英横丁の全資産に関する清算報告書です」

高村美咲はきっちりしたスーツ姿で、三冊のファイルを重厚なデスクに横一列に並べた。

傍らで、内田成実弁護士が老眼鏡を押し上げ、ブリーフケースから赤い公印の押された法務書類を取り出す。

「清宮さん。ご依頼どおり、岩崎さんが残された現金預金と、風英横丁の不動産換価分を合算して、総額は8億3,000万。すべて一本化しております」

内田弁護士の声音には、抑えきれない敬意が滲んでいた。

「……新設の医療基金へ、全額を無償で振り替えるおつもりで? 本当によろしいんですか」

清宮紬は万年筆のキャップを外し、迷いすら見せない。

「1円...

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