第118章

清宮紬は黙り込んだ。

工藤葉月――その目は、あまりにも見通しがよすぎる。

「音楽協会のほう、何回催促してきた?」と清宮紬が訊く。

真夏の正体が露わになってから、国内のメディアが騒ぐだけでは済まなかった。国際音楽協会までが、彼女のこの終曲を目を光らせて追っている。

エイドリーに至っては、毎日のようにLIMEで拙い日本語のボイスメッセージを送りつけてきた。師匠はいつ新作を出すんだ、と。

「抑えてるわ」工藤葉月はこともなげに手をひらりと振った。「分かったふりの連中ばっかり。音楽は工場の製品じゃないんだから、出せと言われて明日出るものでもないでしょ」

そして清宮紬へ視線を向ける。穏やかな...

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