第119章

K市では、彼女は盤面を読み切って手を打つ清宮社長であり、名医でもあった。

ここには、ラベルの貼られた顔見知りが溢れている。ほどけない利害の網が、どこへ行っても絡みつく。

その肩書きに縛られ、息をするだけで計算が混じる。

だから、誰にも知られていない場所へ行きたかった。

むきだしの、原始的な生命力を――誤魔化しのない熱を、肌で感じられる場所へ。

榊原冬真は、彼女の瞳に再び灯った光を見て、口元に甘い笑みを浮かべた。

何も訊かなかった。予定がどれほど詰まっていようと、自分が十数時間のフライト直後だろうと、いっさい口にしない。

彼はただ、森野耀へ電話をかけた。

「航路の承認を取れ。2...

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