第12章

若い男の声は小さく、美坂莉央の耳には届かなかった。

そして清宮紬も、その呼びかけを聞こえなかったことにしたらしい。まるで初対面であるかのように、首をかしげる。

「こちらの方は?」

その頃には、美坂莉央はすっかり箱の中へ身を乗り出し、両腕にありとあらゆる装飾品を引っかけていた。

「ああ、この人? 宝飾の商いをしてるのよ。市場には出回らない“いい物”をけっこう握ってるの」

「うちも昔からのお得意さまってわけ」

その言葉に、清宮紬の顔をかすめる、ほんのわずかな不快の影。

同時に、若い男の背中に冷や汗が走った。

彼は、清宮紬がつい先ほど引き上げたばかりの地区責任者の一人で、宝飾品の流...

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