第28章

皆が声のしたほうへ視線を向ける。そこにいたのは、榊原冬真だった。片手をポケットに突っ込み、氷みたいな顔で出入口に立っている。

岩崎成夫は反射的に動いた。すぐさま榊原冬真の前へ詰め寄り、教科書みたいな作り笑いを貼りつける。

「冬真くん! 久しぶりだねえ」

榊原冬真は鼻で笑い、腕を組んだ。

「岩崎さんって、忘れっぽいんですね。ついこの前、いっしょに飯食ったばかりでしょう」

「――あの店、随分と立派でしたよね。店員まで、やたら“筋”がよさそうで」

岩崎成夫も、言外の皮肉は当然わかっている。だが取り合わず、笑顔のまま椅子を運び、座れと手で促した。

「まあまあ、座って。今日はどうしたの、...

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