第36章

榊原冬真が反射的に口を開く。

「え? それって――?」

薄い唇がきゅっと上下に結ばれ、そこへ艶やかな紅がすっと差す。

清宮紬は花がほころぶように笑い、白い歯を覗かせた。

「お酢でいいと思う」

電話の向こうの声にも、ふっと笑みが混じる。

「じゃあ俺、少し付き添ってる。あとで軽くつまめるもの買って帰るよ」

「……待ってる」

通話が切れたのと同時に、車は先ほどの交差点に寸分違わず停まった。

今度の瀬尾敬は降りる動きが明らかに遅い。それでも車外に出るや否や、当然のように清宮紬のためにドアを開けに走った。

そうして二人は前後して病院へ入り、まっすぐ榊原の母がいる病室へ向かう。

―...

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