第39章

驚いたせいか、岩崎成夫の声はほとんど裏返っていた。

少女はびくりと肩を震わせ、ためらいがちに振り返る。相手が岩崎成夫だとわかった途端、瞳の揺れをすっと引っ込め、代わりに露骨な軽蔑と不快を浮かべた。

「何か用?」

岩崎成夫の顔は落ち着かず、まるで場面に合う服をクローゼットから探すみたいに表情を取り替えていく。

最後に選んだのは、ぎこちない笑みだった。

「紬、こんなところで会うなんてな。君もここで食事か?」

清宮紬が口を開きかけた、その瞬間。

横から黒い影がすっと滑り込み、彼女の前に立ちはだかった。

見上げると、執事の木村さんだった。

初めて岩崎成夫に会ったときのへりくだった態...

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