第44章

榊原冬真の声は、ひどく――ひどく――軽かった。まるで隣に横たわっているのが、ようやく眠りに落ちたばかりの赤ん坊であるかのように。

じゃれ合うような押し合いがひとしきり終わったあと、清宮紬は唐突に上体を起こした。声音には、感情らしいものが一片もない。

「お風呂、入ってくる」

灯りは点いていない。それでも榊原冬真の表情が、喜びと戸惑いの入り混じった、ぼんやりしたものだと――なんとなく見て取れた。

……どうやら、また勘違いしている。

本当のところ、清宮紬は眠る前にいくつかのルーティンを必ずこなす。ひとつ欠けても、睡眠の質が落ちるのだ。

その中でも入浴は、外せない一段。

けれど今さら説...

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