第51章

山村は何も言わず、どこからともなく煙草を一本取り出して、口にくわえた。

青白い火がふっと噴き、火をもらった先から、コーヒーと煙草が混じった匂いがほどける。

清宮瑠奈は眉をひそめ、言葉を飲み込んだ。

――それでも山村は満足しない。足を伸ばしてスリッパを蹴飛ばし、ベッドの上で楽な位置を探して横向きに寝転がってしまう。

いつもは彼女にへこへこと頭を下げる使用人が、この態度だ。瑠奈の胸に苛立ちが噴き上がる。けれど、怒りを顔に出せない。

理由は単純だった。今の瑠奈にとって、山村は唯一、腹を割って話せる相手なのだから。

山村はこの家の古株で、清宮瑠奈が生まれて間もないころから清宮誠太郎夫妻の...

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