第6章

清宮紬の声は大きくない。だが、逆らえない圧があった。

「静かにして。大したことじゃない、停電しただけ」

ガーゼがこめかみを往復し、清宮紬は首をわずかに傾ける。

闇の中で、唐沢星也が探るように口を開いた。

「……もう拭かないのか?」

清宮紬の声には、相変わらず感情の欠片もない。

「ガーゼが濡れてる」

唐沢星也はそこでようやく気づいた。停電した瞬間、手のひらににじんだ汗がガーゼをびしょびしょにしていたのだ。

「……げほ、悪い」

「井上さん。外に出て予備電源を立ち上げて。急いで」

部屋の隅で人影が「はい」と応え、真っ暗闇の中を手探りで動き出す。

ドアが開いた瞬間、廊下の光が室...

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