第86章

倒れた、その一瞬。岩崎真乃の脳裏を走馬灯みたいに無数の映像が駆け抜けた。ここ数日、あの審査員に付き従った――吐き気のする場面ばかり。

岩崎成夫に慌てて抱き起こされるまで、真乃は信じられなかった。あれだけの労力を払い、初めての夜まで差し出したのに、手に入ったのはたったの500万円。

ようやく呼吸が落ち着いた頃には、相手の電話はすでに切れていた。目の前にあるのは、皺だらけの岩崎成夫の顔。真乃の目には恐怖が張り付いている。

「真乃、大丈夫か?」

真乃は小さく息を吐き、従順な仮面をかぶり直した。

「お父さん、平気。最近は大会の準備で、ちょっと疲れてただけだと思う」

それから、わざとらしく...

ログインして続きを読む