第9章

 オーウェンの母は笑みを浮かべ、私が持ってきた手土産を受け取った。視線はずっと、私の顔から離れない。

 緊張で、掌は汗びっしょりだ。

 この屋敷は、想像していたよりずっと立派だった。フレッチャー家がこの街でどんな立場にあるのか――噂程度には耳にしている。だから私は、意地の悪い詮索か、丁寧だけれど距離のある挨拶を覚悟していた。

 けれど、現実は真逆だった。

 オーウェンの母は私の手を取る。やわらかいのに、芯のある力強さで。

「ライリー、よく来てくれたわ。ようこそ、うちへ」

 傍らでオーウェンの父が笑って言う。

「中で話そう。外は冷える」

 その穏やかさに、私は思わず目を瞬いた。...

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