第5章

 彷徨うように伸びた私の手の狂気は、一瞬で断ち切られた。涼真の手が稲妻のように振り下ろされ、鉄のような力で私の手首を締め上げる。そのまま指先をねじり上げ、彼の腹筋の灼ける熱から無理やり引きはがした。

 闇の中で、彼の掌はぞっとするほど冷たい汗でぬめっていて、こらえるだけで精一杯なのか、拳の関節がかすかに震えていた。

「じゃあな。お前はそこで禁欲の誓いでも破ってろ」

 数歩先で、拓海が笑った。軽く、嘲るような笑い声だ。ソファに掛けてある、びしょ濡れの服と下着に目をやり、軽蔑と嘲弄を滴らせた声で言う。

「ほどほどにしとけよ、兄さん。あのイカれた女、まだ外で雨に打たれながら癇癪起こしてる。...

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