第28章 真田社長は彼女の彼氏になってほしいと言った

彼の声音は揺るがない。疑う余地すら与えない断定。けれど耳を澄ませば、言葉にしきれない甘い優しさと、危うい艶が絡んでいた。

その瞬間、相馬蛍は息を呑んだ。心臓が数拍、すとんと抜け落ちる。次いで、情けないほど目の奥が熱くなった。

真田辰則が、テーブルの端に投げ出したままの彼女の手元へ、さっと紙ナプキンを差し出す。

「……」

相馬蛍は一気に我に返った。目の前の男は満面の笑み。胸の内には、弄ばれた怒りがどっと満ちる。

――最悪。もしこいつが、私があの頃の相馬蛍だってもう気づいてるなら。

きっと心の中で笑ってる。相変わらず、みっともないって。

簡単に握られる。息も、自尊心も、好きなように...

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