第30章 怖がらないで、これからは俺がいるから

「相馬蛍!」真田辰則が怒号を飛ばす。

「いい加減にしろ!」

その言葉が落ちた瞬間、彼女の身体はぐいっと反転させられた。背中が、男の大きくて熱い胸板にぴたりと張りつく。逃げ場のない抱擁。

馴染みのある、ひやりと澄んだ匂いが、我先にと鼻腔へ流れ込んできた。

首を締めつけられていたのをようやく解かれたばかりで、むせ返るほど息が苦しい。相馬蛍が反応する間もなく、バスローブの帯が片手で乱暴に引き抜かれ、温かな手が強引に滑り込んでくる。

びくん、と全身が跳ねた。

耳元で、低く掠れた声が囁く。

「俺の奥様になるって言っただろ。水原初歌ひとりで、引くのか?」

五年前と変わらない。触れれば触れ...

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