第69章 戻る道なんてない

子どもたちのはしゃぎ声が、少し離れたところから絶え間なく、相馬蛍の耳に絡みついてくる。

彼女は自分の腕に歯を立てた。堪えようとしても、喉の奥から洩れる声までは止められない。

真田辰則は乱暴で、傲慢で――いつもの端正さも、育ちのよさも、どこかへ投げ捨てたみたいだった。

相馬蛍は本気で、平手打ちしてやりたかった。

耳元に落ちてきた男の声は、低くざらついて不機嫌そのもの。

「俺の息子に、ほかの男をパパって呼ばせる気か。どういうつもりだ」

……そういうこと。真田辰則という大馬鹿――いや、大狂人の地雷を踏んだらしい。

相馬蛍は冷たく笑った。

「思い上がらないで。あの子はあなたの息子じゃ...

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