第70章 そんなに欲求不満なの?

考えるまでもない。真田辰則が彼女に渡すはずがないのだ。

だって、水原初歌こそが――彼の「本命」なんだから。

ほんっと、クソ男。

ただ、気まずいことに。教室を出た瞬間、江口霊が職員室からちょうど出てきた。

その反対側からは、相馬梓哉が上機嫌で駆けてくる。

「ママ、どこ行ってたの? パパが探してたよ」

江口霊は教室の入口まで来ると、ちらりと中を覗いて、すぐに察した。

男と女が二人きりで、同じ教室。

……私より遊び慣れてるじゃない。

ちぇっ。

相馬蛍は小さな手を握り直し、にこやかに言った。

「ママはさっき、江口おばさんのところにいたの。幼稚園での梓哉の様子を聞いてたんだよ。ち...

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