第77章 過去の出来事

相馬蛍は上着を脱いで洗濯かごへ放り込み、浴室のドアに鍵をかけていなかったことを思い出した。

振り返った、その瞬間。

彼女より頭ひとつ分は背の高い真田辰則が、いつの間にか目の前に立っていた。

「……入ってきて、何するの?」

何度、裸を見られたって。慣れるはずがない。胸の奥が、ひどく落ち着かない。

「俺が何をするか、だって?」

真田辰則は長い脚で距離を詰め、見下ろす。値踏みするような視線は、まるで判決を待つ罪人を見るみたいだった。

口元に浮かぶのは、上に立つ者の嘲りそのもの。

「分からないのか?」

追い詰められるように後ずさりした相馬蛍は、足元がもつれて背後の椅子にどさりと腰を...

ログインして続きを読む